アワシャーレの5人
サ:[サーシャ]オーストラリア出身の大学生
ま:[まい]IT企業で働く社会人1年生
み:[みほ]留学休止で日本滞在中
マ:[マリア]夢に向かって勉強中の大学生
な:[ななえ]働きながら勉強中
バイデン政権が保健担当次官補にトランスジェンダーを指名したニュースをきっかけにLGBTQの基礎知識を学びました。その後の座談会では一体どのような話題になったのか、前編・後編に分けてお届けします。
【出現する単語の補足】
シスジェンダー(cisgender):出生時に割り当てられた性別と自認する性別(性自認)が一致すること。
トランスジェンダー(transgender):出生時に割り当てられた性別と自認する性別が異なること。
ヘテロセクシャル(heterosexual):異性愛者のこと。セクシャリティーに関する概念。
ホモセクシャル(homosexual):同性愛者のこと。
シスジェンダー≠普通
マ:ヘテロセクシャルでシスジェンダーの人は「普通」ではなく、色々なセクシュアリティの中の一種にすぎないと気づいて、びっくりした。社会がシスジェンダーとヘテロセクシュアリティーを標準にして、「レズビアン」や「トランスジェンダー」などを分類していくけど、実はシスジェンーダやヘテロセクシャルは「普通」じゃなかった。
サ:オーストラリアには「シスジェンダー」という言葉がたまに記事に載ったりするけど、ヘテロセクシャルを「ストレート」と呼ぶことが多い。
ま:そういう言い方があったんだ!
サ:実は、中・高校生の自分が何も考えずに「ストレート」を使っていたけど、よくみると、ストレートの意味は「まっすぐ」じゃない?
マ:つまり、シスジェンダーの人は真っ直ぐで正しくて、そうじゃない人は曲がっているってこと?
サ:そう聞こえてしまう。そして、「ヘテロセクシャル」という言い方があるけど、LGBTQの人が自分たちのことを「ホモセクシャル」とあまり言わない。
ま:最近の日本だと「ホモセクシャル」は言っちゃいけないと感じてたけど…
な:確かに。
サ:今でも「ホモ」に軽蔑的なニュアンスが入っているから、結局「LGBTQ」が一番正しくて無難に思えるね。
み:「LGBT」が出た時に、わたしたちの頭の中に文字ごとに分類ができ、区別も現れたよね。最初はよく分からなかったけど、今日の話で、色々な組み合わせがあってLGBTQAIは区別ができなくなるほど複雑だとわかった。
マ:色々なLGBTの著名人もいるのに、みんなは一緒じゃないってことね。
ま:そうだね。自分のことを男性だと自認しながら、女装している人もいると知ってびっくりした。
LGBTは標準になるべき?
な:私もLGBTを「ヘテロセクシャルかつシスジェンダーじゃない人」だと思っていた。今日の話のおかげで、「LGBT」はシスジェンダーやトランスジェンダーを含めて成り立つ言葉と考え始めた。最近は仕事で「SOGI」を耳にしたりすることもある。
サ:SOGIって?
な:英語のSexual Orientation and Gender Identity の略語だけど、訳すと「性的指向と性自認」になる。人の性的自認や性的指向に関わるハラスメントもあって、「SOGIハラ」というの。
み:確かに人が自己紹介をしている時に、見た目がみんなの思っている性自認と一致していると、聞いている人は「へー」としか思わないで、流すよね。
サ:でも服装や喋り方が見た目と違うと、「あの人は〇〇じゃない?」みたいな話が出てきそう。
な:「SOGIハラ」になりかねないね。
マ:私は当事者の立場から考えたことがなかったな。自己紹介の時に「身体は女性で、自認している性は女性です」もわざわざ言わないね。
ま:私も。ただ、相手に違和感を感じたら、余計なプライベートを聞いちゃいそう…
オーストラリアと日本:似た者同士
み:ところで、日本では多くの場合に出生時の外見で性別が決まるという話があったけど、オーストラリアはどうなの?
サ:オーストラリアも日本と同様に、外見と医者や親の判断で決まってしまう。
ま:手術も行われるの?
サ:場合によってね。でも子供が大人になったら、「自分の性に違和感を覚える」や「なんで自分の性を選ぶ権利がなかったのか」と疑問を抱いたり、怒りを覚えたりする場合もある。
な:時にはずっとホルモンの薬を飲み続けなきゃいけないね。
サ:友達から聞いた話だけど、身体の性と自認の性が一致していない子がいた。12歳の頃から親の許可を取って、成長ホルモンを止めるための薬を飲んでたらしい。
ま:どうして?
サ:「今」の性の体で成長したくないから、とりあえず成長を止めて、成人したら手術したかったからだそうだ。
マ:そういう事情もあるんだ!
な:オーストラリアだと戸籍はどうなるの?
サ:戸籍も住民票もない!パスポートぐらいは変わると思うけど。
な:戸籍がないの?!
サ:書類に関してオーストラリアは日本ほど細かくないし、アンケートや政府の調査でも性別は女か男か以外にも、「その他」などの欄が増えてきている。
み:不一致の人が悩むことは日本の紙社会のせいかも。特に、性別を記入する欄が多いから、どちらかに振り分けないといけなくなる。
な:それにぴったり当てはまらない人は違和感を感じやすいだろうな。
マ:自分の中で性的自認について自由に考えることはできるけど、文字になると簡単に変えることができなくなっちゃうね。
な:どちらかを選ばなきゃいけない時に、余計にストレスを感じそう。
み:生まれた時に性が病院の先生に決められるっていう現実に向き合うことも確かなストレスだね。
マ:赤ちゃんはそもそも自我がないし、性的指向を表しようもないね。