アワシャーレの4人
©illustrated by Mai.
Sasha:日本の大学に通いながらアワシャーレでインターンをしている。オーストラリア出身。
Mai:長年アワシャーレのインターンだったが、就活を終えて今年春から社会人になる。
Maria:就職活動中の大学生であり、現在オンラインでアワシャーレのインターン生。
Miho:アワシャーレの社員。他の企業での経験もあり。
上野千鶴子さんの経験談と鋭い視点:刺激と敬意
後半の話題は上野千鶴子による記事であり、かなり歯ごたえがあった。記事内容として、森会長の差別的な発言、または日本の女性の現状や社会のありさまといったテーマが扱われていた。それから、アワシャーレの4人は上野千鶴子のパワフルな指摘、そして企業や男社会の中で活躍した上に、現在女性のために語っている上野さんの視点や立場に興味がひかれ、この記事を選んだという。
難しいテーマだったけど、「根回し」や「忖度に対する」に対する私の今までのマイナスなイメージを改めるきっかけになった。
それは具体的にどういうこと?
特に、目的達成のためなら「根回し」や「忖度」が必要になると気づけたのね。そして、日本企業で、SDGsにおけるジェンダー平等の優先順位が低いことも放っておけない問題で、その意識を早く上げるべきだと思った。しかも、今の学生は授業でジェンダーやダイバーシティについて学んでいるし、当たり前だと思っているよね。
でも、男性の都合に合わせた職場環境がまだ続いていると言えるじゃない?
そうなの。だから、説明会やホームページでダイバーシティを謳っている会社に実際に入社すると、現場では全然違うことに気づいて驚く人も多いと思う。それだけ現場の社員までダイバーシティを浸透させることが難しいと感じる。それから、「男性がイエローカードを提示する」という上野さんのコメントも最もその通りだと思って、女性ばかりが声をあげるのではなく、男性も批判すべきことを批判し、女性と一緒に声をあげるべきだよね。
本当にその通り。ただ、今回はテレビで男性コメンテーターが「女性蔑視はいけないですね」などと言った理由や背景は何だったんだろう。
公共の場でそうとしか言えなかった可能性を一応考えられる。みんなが本当に「女性蔑視はいけない」と考えていたかは分からないからね。
周りがイエローカードを出したから自分も流れ的に出したかもしれないし。
全然ありえる。私はこの記事を読んで、似たような身近な出来事を思い出した。大学の同級生の男子と女性の雇用や給料の低さについて話していたら、彼が「悪いけど、それは男女差別とかじゃなくて、その人の能力の問題じゃないのかな?」と言った。
そうなんだね。
その時に、差別のない学校環境で育っていると、積極的に外のニュースや情報を意識しないと、社会の問題や課題に気づかない可能性があると思った。そうしたら、物事を問題視しない、イエローカードを出さない若者もいるかもしれないって。
確かに、自分の周りに問題があっても自分が影響されていない、かつ声が上がっていないのなら、問題に気づけなかったり、分からなかったりする状況が生じると言えるよね。
例えば?
鹿児島の議員の中に女性がいなくて、議員さんが「困ることはありませんか」と聞かれた時に、「全くありません」と答えた時。つまり、議会において女性がいる状況を作らなくても問題がないから、新しい状況を作ろうとしない。「女性がいない」ことが問題にならないから、イエローカードをあげたくてもあげられない状況になってしまうと言うことだと思う。
もしくは、会社とかで男性が女性の給料や立場の低さについて追求すると、逆に自分が罰を受ける怖さもあるだろうね。
そこで「根回し」なのかな?要するに、状況を100%変えるために、根回しをして、声を上げる、動き出すタイミングを図れるということかな?
その場合、時間やスキル、または労力がかかるよね。ある程度、上の立場につかなければ、言いたいことが伝わらない可能性もあるだろうし。
この状況が変わらなきゃいけないし、変えるために日々頑張っている人もいっぱいいるけど、本当に変わるかなと考えたりする時があるよね。上野さんが書いたように、「おっさん」には年齢がないものね。子供が親から保守的な考え方を受け継ぐことは大いにあると思うし、それが定着する前に状況を変えていかなきゃと思った。
本当に学歴で選ぶのが危険だよね。やはり管理職になると、「東大の男性」というイメージがあるけど、そうじゃなくてその人のスキルや性格で選ぶと、状況が変わりやすいかもしれない。
この記事を読んで、実際に社会でやってきた方の話が聞けたので「こんなにひどいんだ」と気づけた。そして、「女性は怖い」という話をよく聞くけど、実際の社会には男性の方が怖いじゃんと思った。
確かに。今まで思っていたことを見直させられた気がする。
そして、この記事に書いてあるように、橋本聖子さんが森会長の後継者として選ばれたことは、もし彼女が失敗したら「ほら、やっぱり女性はだめじゃん」と言われることになる点も、私は全然気づかなかった。それは女性の管理職率を上げようとしている企業にも影響を及ぼすかなと気になっていた。
私も企業に入り、管理職を目指そうとしても、指導を受けるのは新人の時のみで、そのあとは自力でやらなければいけないなら、やっぱり不安になりそう。私は先輩から指導やアドバイスを受け続け、スキルを身につけていきたいのに、企業にポジションだけを与えられるのはどうかなと思った。
女性の管理職に力を入れていると主張している企業もちょっと怪しく見えてきちゃうね。
私も、現在の社会風景に合わせて、うわべだけで女性管理職やダイバーシティを応援している企業が増えているのかなと気になっていた。外部の人にウケがいいからそう言っているけど、トップの人は心からそう思っていないかなって。
確かにね。
上野さんが書いたように、従来の環境はいわゆる「おっさん」たちにとって好都合だったし、その環境で成功してきたので変わる必要がないと言えるかもしれない。
そうかもね。私達は色々な会社さんと働かせていただいている中で、ダイバーシティや女性活躍をすごく頑張って推進している方にたくさん出会えたでしょう?だから、たった一回のミスで「ほら、やっぱり女性はだめじゃん」とレッテルを貼られたくないんだよね。
オーストラリアの唯一の女性首相も失敗を起こした時に、他の男性首相が受けないような扱いをされていた。
例えばどんな風に?
ひどく批判されたり、差別を受けたりしていた。私は小学生だったけど、同級生が「ただ女性だから選ばれたでしょ」と言った記憶もある。今となって、子供が首相の能力やスキルとかではなく、性別を注目していたのは恐ろしいと思える。
だから女性が入ってくると、余計なコメントや批判が見られるんだと分かるんだね。
橋本さんが成功してほしいけど、もし失敗をして厳しい目で見られたら本当に怖いね。
ニュージーランドといった国には女性首相で良い実績を残している例があるし、日本にも女性で成功してきた例もたくさんあると思う。ただ、社会がそれを見えていないかもしれない。
なんでまっさらな目で女性を見えないんだろうね。
そうね。学生の時に男女の差があまりないのに。
私もそういう印象を持っているけど、確かに高校の時に何かの係を決めていた時に、先生に「これ大変だから女子は違うのにして」と言われた記憶はある。
言ってみれば、「マイクロアグレッション」ってやつかな。
「マイクロアグレッション」って?
この場合に関しては、明らかに「差別」とか「セクハラ」とかじゃないけど、さりげない言葉や場の雰囲気で男尊女卑、または従来の男女の関係が薄々感じられたり、維持されたりするということ。
なるほどね。
少女漫画なんかにも主人公が自分で重いものを持てず、ヒーロに助けてもらう羽目になるといったシーンをたくさん読んできて、私はそれを非現実的だと思って笑う。だけど、そればかりを読んで育った人は「女子は重いものを持てない」みたいなことに対して違和感を感じないかもしれないね。
むしろキュンとするよね。小さい時から読んでいるからそれがいいと思っちゃう。私も高校の時に「先生は私のことを思ってくれてるんだな」と思った。
確かに先生が生徒の安全や体力の限界を考えて言っているかもしれないけど、女性が多くいる看護師や保育士の仕事だと、女子が重い荷物を持ったり、怪我をしたりする時がたくさんあると思わない?
そういえばそうかもしれないね。
そうしたら、先ほどの「女子は大変・危険なことをするべきじゃない」の理屈が覆されるんじゃないかな。それに、女性が常に助けを待つわけにはいかないと思う。だって、いざという時に誰もが助けてくれず、自分が抵抗することに慣れていなかったらどうする?
この後も話がどんどん進み、残業の後で女性1人で帰ることの危険性と責任者の立場、そしてそれを防ぐためとして「ハイブリッド勤務」の可能性まで及んだ。アワシャーレの4人が非常に有意義で刺激的な時間を過ごし、ぜひ読者の皆さんにも新たな気づきが生まれてほしいとのこと!
次回もお楽しみに!